事例集
「バーの店長から電子回路製造のスタートアップ企業へ転職 神 裕一郎さん」
神 裕一郎さん
1985年生まれ。バーで店長として勤務した後、特殊な方法でつくる電子回路製造のスタートアップ企業に転職。現在はその企業の愛知県内にある工場で会社員として働く。
現在の職業を決めるまで
―――以前のお仕事について教えてください。
以前はバーでお客様の接客をしながら、店全体の管理・運営をしていました。
オープニングスタッフとして、店舗スタッフの制服デザインも考えましたし、オープン後は接客はもちろん、スタッフの教育など、幅広く仕事をさせてもらいました。
バーはお昼から深夜3時までの営業で、以前はとても忙しかったのですが、新型コロナウイルス流行の影響で、私が退職する直前の半年間ほどは、お客様の数が減り、売り上げにも影響がありました。
―――なぜ、製造業への転職を決意されたのですか?
やはり、新型コロナウイルス流行が一番の理由です。それで転職を考えていたところ、今の会社を見つけました。
電子機器に使用する回路基板を製造している会社なのですが、既存の製造方法とは全く違う方法での製造・量産を目指していたんです。
回路基板は通常、基材に銅を貼りつけた後に、さまざまな工程を経て不要な部分の銅を溶かして回路を形成させます。でもこの会社は、必要な部分にインクジェット印刷で金属を印刷して回路を形成するという独自の革新的な方法を実現していました。
これまでの方法と違い、製造プロセスを大幅に短縮できるのでコストを下げられ、環境負荷も少ない。人類の歴史で初めての方法で製造を行うことに興味を持ったのが、この業界へ転職をしたきっかけです。
―――製造業へ転職するにあたってどのような準備をしましたか? 実はバーで働く以前に、部品製造関係の仕事を少しだけしたことがありました。ですので、工場での作業工程など基礎的な知識は持ち合わせていると思っていました。
そのため、そこまでの準備は特にせず、過去の仕事の内容を思い返したくらいです。
ほぼ未経験で製造業に飛び込んでみて
―――今の会社で働き始めた、最初の印象はどうでしたか?
最初の印象は、当初なんとなく考えていた工場での製造業務とは勝手が全く違ったということです。
それまで持っていた製造業のイメージは、入社したらすぐに工場でマニュアルに沿った工程で作業を行う、という比較的シンプルなものでした。しかし、スタートアップの会社で、まだ今のように製造設備も十分にそろっていなかった頃に入社したので、設備自体の受け入れ作業など生産体制構築の準備から関わる必要があったんです。
世界初のモノをつくるという前例のないことなので、私含めて手探りで仕事を進めていきました。
―――今の会社で働くやりがいはどんな時に感じますか?
スタートアップ企業ですから最初は社員数が少なかったのですが、徐々に人員や生産体制が整っていく様子を目の当たりにできたので気分が高揚しましたね。お祭りの準備のような感覚とでも言うのでしょうか。
また世界で唯一の手法で生産し、かつ量産を可能にした技術にほぼスタートから関われる。今まで見たことのないものができていくのを想像するのはワクワクしました。それは今も変わっていません。
それから、仮説通りに製品ができた時にとてもやりがいを感じます。仮説通りに物事が進むなんてことはほとんどないのですが、だからこそ思い通りに製品ができた時に達成感とやりがいを感じます。
神さんが働く職場の工場長 中島様に神さんの日々の仕事ぶりに関してお話を伺いました。
―――中島様から見た神さんの働く姿はどう感じていますか?
彼は自分から創意工夫をして仕事に取り組む方です。
私たちの会社は既存の技術にのっとって製造を行っているわけではなく、新技術を用いた製造を行っています。
したがって確立したマニュアル通りにただ作業をすれば良いというわけではありません。製造プロセスの検証・改善を日々行っています。
そのため、自ら考えてアイディアを出せる人でなければならないのです。そういう意味では、神さんは会社にとって非常に魅力的な部分を持ち合わせている人だと思います。
彼自身、製造業はほぼ未経験で慣れない仕事だったかと思います。しかし、自分で考えたり調べたりをして、経験のあるメンバーの中に溶け込んでいきました。
そういった溶け込める力、いわゆる浸透力や柔軟性に優れていると感じています。
以前、接客業をしていたこともあって、周りとコミュニケーションをとるのも上手ですね。
製造業で働く日々の業務
―――1日の勤務時間や業務内容を教えてください。
朝8:30に始業、朝礼の後、まずチャットやメールチェックを行います。
私は製造ラインでの作業ではなく技術面のサポートをしているので、それ以外の時間は、製造業務の効率化やプロセスの改善を定時まで検証・実験しています。
製造する回路基板は、スマートフォンや車載機といった身近なものから、産業用ロボットに使用するものまで様々です。お客様の要望やコスト・耐久性など、今の製造における課題解決方法や問題の原因究明を行うんです。
工場内の作業現場へ行き、仮説に基づいた条件で実験や検証を行った結果、製品としてより良いものになるのか、トライ&エラーを繰り返しています。
―――前職で身につけた知識・スキルや経験で、今の仕事に役立っているものはありますか?
前職は、接客をしながらスタッフの指導や売り上げ管理など常にマルチタスクが求められる仕事でした。何かをしながら、もう一つのことにも目を向ける。今の業務でも仮説Aを実験しながら、ダメなら仮説B・Cと代わりの方法も常に考える。マルチタスク思考が役立っていると思います。
また、社内カルチャーとして従業員同士でコミュニケーションを積極的に取るように推奨されているので、作業にあたっている方に自分から積極的に声掛けなどを行うようにしています。これも接客業だった前職で身に着けたスキルのおかげです。
あとは、店長として働いていたのでマネジメント視点を持って仕事にあたるようにもしていますね。
―――今後新たに取り組みたい業務や資格、意気込みなどはありますか?
回路基板の製造には溶剤や危険物を取り扱う場面が多々あり、今後も増えていくと思うので危険物取扱者の資格を取りたいと考えています。
資格を取得することで扱えるものが増えるので、仕事の幅が広がります。ある意味でのキャリアアップとも言えるかもしれません。
また、今後重要な新設備が導入される予定なので、まずはそれを使いこなし、より良い品質の製品をつくり出せるようにしていきたいですね。
異業種転職を考える方に向けて
―――異業種転職するにあたり、戸惑いや苦労したことはありましたか?
まず前職とは業務内容がまるで違うので、当初は何をしたら正解なのかもわからず戸惑いました。
また、スタートアップ企業ならではの苦労や難しさは日々感じています。しかし、それと同様にスタートアップだからこそ、苦労を共にした仲間と協力しながら仕事に取り組み、プロジェクトがうまくいった時の達成感は人一倍あります。
―――異業種転職してよかったことはありましたか?
新しいことに取り組んでいるので、日々新鮮です。
常にワクワクしながら仕事に取り組めるのは未経験だからこそだと思います。
―――これから異業種転職を考えている人に向けてアドバイスは何かありますか?
異業種という言葉にとらわれすぎず、やりたいことをやれば良いと思います。全く知らない業界に対して怖気付く必要はないです。
やりたいこととやれることは違いますが、まずはやってみないことには、やりたいことを仕事にできるかわからないですから。
私も回路基板の製造なんて初めはできると思いませんでしたが、スタートアップ企業だったから私のような業界未経験者にも間口が開かれていました。まずは飛び込んでみて、そこから必死になって学んでいけば、何事も遅いなんてことはないんです。
チャレンジしていく精神が大事だと思っているので、悩んでいる方は情報を集めたり、業界について調べたりして、ぶつかっていくと良いと思います。
job tagは自分の進む道に悩んでいる人を導いてくれる
―――実際にjob tag内の「職業興味検査」を受けてみて、本サイトに関する率直な感想やご意見があれば教えてください。
実際に職業興味検査を受けてみて、検査結果に過去に働いた職種と共通する点があったり、私の性格を知っている知人に「この仕事が向いているのでは?」と言われた内容もあって驚きました。そして、何より「探索的な仕事が好き」は今の仕事に一致しています。
あと、「いろいろな切り口から検索」や「業種・職種を知る」から、「B to B~身の回りでみることが少ない職業」というページを見ることができますが、これはいいですね。
私自身がまさにBtoB(企業間取引)の仕事です。世の中にはたくさんのBtoBの仕事がありますが、消費者として自分が直接関わっていないと、なかなか知る機会がありません。そのような情報も教えてくれるのはありがたいことです。
これから進む道に悩んでいたり、自分のキャリアを悩んでいたりする人にとって、このサイトは助けとなってくれるものだと感じます。