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事例集

「父の要介護認定をきっかけに、紳士服販売から介護福祉士に転身 田中恵輔さん」

田中恵輔さん

1971年生まれ。紳士服量販店に勤めた後、実父の要介護認定をきっかけに介護の仕事に興味を持ち40代の時、未経験で転職。
現在は、愛知県内のグループホームで介護福祉士として働く。

現在の職業を決めるまで

―――以前のお仕事について教えてください。
長野県にある紳士服量販店で、お客様の接客をしていました。
いわゆるスーツ屋さんです。来店されたお客様の寸法を測って、それに合わせてスーツを調整、お渡しするという。
 売り上げノルマは何が何でも達成しなさいよ。と厳しかったのを覚えていますね。
あとは礼儀作法。スーツの引き渡し用書類にお客様が記載しているときは、片膝をついてお客様より目線を下にする。郊外型店舗だったので、お帰りの際は車が見えなくなるまで頭を下げる。電話は3コール以内に必ず出るなど、いろいろありました。
売り上げと礼儀作法は常に意識して働いていました。

―――なぜ、未経験の介護のお仕事への転職を決意されたのですか?
私の父が要介護認定を受けたのが一番のきっかけです。

それまでは本当に介護業界とは縁のない生活を送っていましたが、漠然と自分の将来について考えていた時に、父が要介護認定となって、介護の仕事に興味を持ちました。父の体の状態を理解したかったし、働くことで家族の手助けになればと思ったんです。そして、知人が現在の介護施設で働いていたので、いい機会だと思って転職を決意しました。

―――介護のお仕事を始めるにあたってどのような準備をしましたか?
正直なところ、準備は何もしなかったんです。介護の仕事に関しては本当に何もわからない状態で働かせてもらうことになったので、働き始めてから毎日が学びでした。
その経験を活かして介護福祉士の資格も取得し、知識や技術も身につきましたが、今でもたくさんの事に気付かされています。

グループホームは利用者さんの食事の調理もするのですが、はじめは白菜とレタスの違いすらわからなかったんですよ。
なので、介護というより生活の基本的なことから先輩方には教えていただきました。

業界未経験で介護業界に飛び込んでみて

―――介護業界で働き始めた、最初の印象はどうでしたか?
テレビか何かで見た、しんどい・つまらない・肉体労働という負のイメージを勝手に持っていました。

でも、実際に働いてみたらそうではなかったです。
介護施設にもいろいろ種類があって、今働いているグループホームは比較的要介護度の軽い方がほとんどです。ですので、家庭の延長のようなアットホームな雰囲気にまず驚きました。

―――介護のお仕事のやりがいはどんな時に感じますか?
働き始めた頃は、利用者さんが笑ってくれたり、安全に一日を終えられたりしたらよかったなと思っていました。
最近はすこし変わってきていて、利用者さんが喜んでくれるのはもちろん嬉しいですが、やりがいという意味では、自分の判断が会社の目指す方向と一致していたときに感じるようになりましたね。

自分のことだけを考えたら、勤務時間中、利用者さんにひたすら低姿勢で対応していれば、ある程度コミュニケーションはうまくいくんです。でも施設としては、それではだめで、利用者さんに対して注意すべきことはしっかり伝えないといけない。そういう行動ができるようになったと思います。
ある程度働いて仕事に対して余裕が生まれたので、会社視点に立った考えや行動がとれるようになったんだと思います。

今回は田中さんが働く職場で、一緒にお仕事をされていて事業所の管理もしている小島様にお話を伺いました。

―――小島様から見た田中さんの働く姿はどう感じていますか?
この施設での勤務年数では、実は私よりも田中さんが先輩で、私がやってきたとき田中さんはすでに介護リーダーとして働いていました。

一言でいうと、田中さんは介護の枠にとらわれず、いろんなことに挑戦してみようという姿勢を持っている方です。
きっと他業種での経験が生きているんだと思うんです。利用者さんは一人一人個性も性格も違います。その人に合わせて、さまざまな角度でコミュニケーションを取る工夫をしていて、私たちも学ばされることが多いですね。
利用者さんの排泄介助や事務作業といった、あまりやりたくないであろう業務に関しても熱意をもって仕事に取り組んでいて、その姿勢が他の職員にもいい刺激になっています。

介護福祉士として日々の業務

―――1日の勤務時間や業務内容を教えてください。
業務内容としては、主に食事の用意や排泄の介助、おやつの時間とレクリエーションなどがありますね。
職員でシフトを組んで業務にあたるので、日々の勤務時間はバラバラです。また、レクリエーションは室内で行うこともあれば、近くの公園まで散歩に出かけることもあるので、内容も変わってきます。

グループホームとしての流れですと、朝の6時くらいから利用者さんの朝食の準備をして、10時におやつ、そのあとレクリエーションを入れて12時に昼食。午後は自由時間などを挟んで、15時におやつ、18時に夕食といった流れです。大体20時くらいには皆さん床につかれます。

―――食事やおやつの用意だけでも、お忙しそうですね
食事の用意や片付けなど、利用者さん自身がお手伝いしてくださったりするんですよ。皆さん、自分でできることは自分でやろうとしてくださるので、私たちも助かっています。

以前、利用者さんにどうして手伝ってくれるのか聞いたことがあるんです。そしたら「皆でわいわい作業できることが嬉しい。まだまだ自分は大丈夫だと感じるから」とおっしゃっていました。
もちろん危ない作業は私たちがやります。でも、なんでもかんでも私たちがやってしまうのではなく、利用者さんが自分でやろうとすることは、いい意味で甘えさせてもらうようにしています。それが、利用者さんの自信にもつながっているんです。

―――前職で身につけた知識・スキルや経験で、今の仕事に役立っているものはありますか?
やはり礼儀作法です。紳士服量販店で働いていたときは「スーツを買いに来るお客様」、現在のグループホームでは「施設の利用者さん」と相手は違いますが、礼節を重んじて関わるというのは、どちらも同じだと思っています。

あとは目の前の利用者さんやご家族の目線に立つのは重要ですが、経営側の数字という部分にも目を向けないといけなくて、その数字への意識も前職の経験が役立っていると思います。経営がしっかりしていなければ、結局のところ利用者さんへのサービスに影響が出てしまいますからね。

―――今後新たに取り組みたい業務や資格、意気込みなどはありますか?
今年の10月にケアマネージャー(介護支援専門員)の資格に挑戦する予定です。
取得したからといってすぐに業務内容が変わるわけではないですが、自分自身の仕事における幅が広がるかなと思っています。
ただ、ベテランの先輩方でさえ何度も落ちているような難しい試験なので、一つの区切りという意味で頑張りたいです。

異業種転職を考える方に向けて

―――異業種転職するにあたり、戸惑いや苦労したことはありましたか?
介護業界に対して、入職前は負のイメージを少なからず持っていたので不安はありましたが、最初に入ったここのグループホームで食事の準備などの基本的なことから手取り足取り教えてもらえたので、よかったなと感じています。

―――異業種転職したことに関してよかったことはありましたか?
介護業界に転職するまでは、毎日のようにコンビニ弁当を食べ、体の調子が悪くても病院に行かないで我慢する。自分の健康にさえ気を使わない、そんな人間だったのが、健康を意識できるようになったことですね。

40代50代になってくると、どこか体調が悪いなと感じるときがあります。そういうときに人間の体の仕組みはこうだから、この不調が出ているんだ。あれを気を付けよう、これをやめよう。と自分の日々の生活に健康に対する意識が芽生えたんです。
今、知人が腎臓の調子が悪く透析をしているのですが、そういう話を理解できるようになりましたし、健康に関するニュースが自然に入ってくるようになりました。

あとは、日常的に人に優しく接することができるようになりましたね。おじいちゃんおばあちゃんと仕事で接しているうちに、思いやりの心が強まった気がします。

―――これから異業種転職を考えている人に向けてアドバイスは何かありますか?

ある程度の向き不向きや、職場の雰囲気というのは大事だと感じています。
同じ介護業界の中でも、医療知識が求められる現場もあるので、未経験で何の準備もしていなかった私がそこに配属されていたら、果たしてここまで続いたのかなと思います。

幸運なことにこのグループホームで、介護の基本から教えてくれる優しい先輩や、目標となる上司に巡り合うことができました。
運もあると思いますが、異業種に興味を持ったのなら、未経験だからとか年齢を気にするのではなく、挑戦してみるのがいいと思います。

job tagは気づいていなかった自分の仕事観を教えてくれる

―――実際にjob tag内の「仕事価値観検査」を受けてみて、本サイトに関する率直な感想やご意見があれば教えてください。

今の仕事を特に意識せず、率直に思ったことを選択しただけなのに、おすすめの職業に介護や福祉が出てきてました。改めて自分自身の価値観に今の仕事が合っているんだとわかりました。

―――お仕事の紹介ページはどうでしょう?
介護支援専門員/ケアマネジャーの職業解説ページを拝見しましたが、入所する施設によってケアプランが異なる点についても解説するなど、これから業界を目指す人にも詳しく解説してくれている印象を持ちました。

仕事選びの基準は一つではないと思うんです。
自分が大事にしたい仕事の軸や、向き不向き、福利厚生、職場の雰囲気など複数あると思います。そういった部分を踏まえて結果を出してくれますし、各職業の情報も知ることができる。業種を選ぶ上で参考にできるツールだと思います。